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まともじゃない

ポエム置き場です

クリームソーダ

2人でいるのにクリームソーダの炭酸が弾ける音が聞こえて終わりの予感がした。

どうしても手に入れられない男がいた。手に入れたらちゃちなモンだと思えそうで手を出せない男がいた。
いま、目の前にいる男とは違う男である。目の前の男(めんどうなので前男)は彼氏というもので、1年ほど一緒にいる。最近は一緒に住もうという話も出ていて、「いよいよあんたも年貢を納める時がきたわね」とババアの先輩に言われた。年貢を納めるとか言わないのよ平成生まれは。江戸時代の人もそうだっただろうけど、年貢は納めたくないものだ。もう恋愛してはいけない、他の男と朝を迎えたりしてはいけない。それが年貢を納めることなら絶対納めたくない。
どうしても手に入れられない男はなんと年下だった。10人居たら5人が振り向き、4人が目で追う。そして1人は本当に虜になって好きになってしまう。そんな容姿端麗な男は体格にも恵まれ、性格も適度にひねくれており、それがまたこの男のことは私にしか理解できないのでは?と思わせるのにちょうどよい捻くれ者だったのだ。男は一応年上の私に敬語で話しかけた。「このまま抜け出しません?」。退屈な飲み会が、めくるめく世界への入口になった。こんなセリフを言っても痒くならない人がいるのだ。抜け出さない?抜け出しだすとも。カラオケを出るとタクシーを捕まえていた。どこへいこう?うちにくる?彼氏大丈夫?矢継ぎ早に質問をされたが、ちゃんと答えられたものはひとつしかなかった。「大丈夫」。

その夜の次の朝と次の夜くらいまでは惚けてしまい、仕事が手につかなかった。生きていてこんなに楽しいことがあるんだと思えた。しかしその次の朝にはもう、日常だ。前男はまさか前女が不貞を働いたなどと思っているわけもなかった。

それなのに炭酸が弾ける音がやけに聞こえて、終わりの予感がするのだ。